BRUTUS 8月1日号(No. 300)
特集=The Art of Absolute Nude 絶対裸体・2
株式会社マガジンハウス
1993年8月1日発行(7月15日発売)
P88- 89
相手が裸だから興奮するわけではない。
背景にある「物語」に欲情させられるのだ。 植島啓司(宗教人類学者)
「ただ一点に集中されたわたしの情欲は、
凸面ガラスに収斂された太陽光線に似ており、
焦点にある物体をすぐに燃やしてしまう。」(サン=フォン)
あまりにヌードや裸体写真が氾濫しているので、ほとんど一枚の写真に目をとめる暇もない。どれも似たようなものに見えてしまう。単純にいって、かつてヌードを見た時に感じたわくわくするような気持ちには、もう永遠になれそうにない。いったい何が変わったのか。
しばらく前、ニューヨークの大学で客員教授をしていた時、あるパーティでルイス・スタインという写真家と会った話は、以前にも書いたことがある。ここで、ちょっとその続きを書いてみよう。彼はソーホーにある彼のスタジオにぼくを誘い、分厚い包装を解きながら彼の作品を次から次へと見せてくれた。これまで敢えて書かなかったが、その時、ぼくは…..(つづく)