1994 京都馬主協会々報 春季号

心ゆたかに 1994・春季号 京都馬主協会々報
社団法人京都馬主協会
1994年6月15日

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P34
連載 教授の趣味手帳
「予想がはずれる時」

あまり競馬についての原稿ばかり書いているわけにはいかないのだが、このところ原稿依頼の60%が競馬関連のもの。現在の総依頼数が毎月50本ほどだから、30本は競馬の記事を書けというものだ。まあ、春のGⅠシーズンということもあるだろうし、講談社から「競馬の快楽」を出したばかりということもあろう。ともかくこの異常事態をなんとか乗り越えなければならぬ。そうしなければ、安らかな日々は戻らない。
 とはいえ、さすがにすべての原稿を引き受けるわけにはいかない。せいぜい月4、5本だろうか。ただ、そうしたなかでも、予想に関する依頼には弱い。性格的につい受けて立ってしまうのだ。そして、必ず負ける。『週刊現代』の「安部譲二の12番勝負」も、『週刊ポスト』の「勝ち抜き競馬合戦」も、すべて初戦敗退。よく考えると、最近「誌上麻雀」など色々あったけれど、全敗だった。自分でもイライラするほど、本番に弱い。かつての勝負強さからすると、いったいどうなっているの、という感じ。
 そういえば、5月のはじめ、ABCのTV番組「おはよう朝日です」で競馬の特集をしたことがある。元阪急の盗塁王・福本豊氏、番組司会の宮川朋子嬢と3人で阪神競馬場に出向き、予想を競うという内容である。8、9、10レースとやって、結果を論評するというのだが、どうも3人ともパッとしない。福本氏はまだ複勝馬券を当てたりして楽しんでいたが、ぼくと宮川譲は全部ペケ。そこでぼくのコメントになり、色々質問されるわけだが、「先生、競馬に勝つ秘訣は?」なんて聞かれても、どうにも答えようがない。そのままあれこれあっていよいよメインレース。全員でパドックに下りる。ここでも、「先生、パドックでの馬を見るコツは?」などと質問されるが、当ってないわけだから、全然気勢が上がらない。
 結局、メインレースは全員で1頭の馬の単勝を買い、声をそろえて応援をするということに決まる。狙いは武豊の逃げ馬イイデザオウ。これもぼくが選んだ一頭だ。「逃げまくるから、少なくても直線まではトップだし、ワッハッハ」というわけで、全員で1万円の馬券を買うことになった。単勝4.2倍。それから、さらに3人はそれぞれプライベート馬券を買いに売り場へと散っていった。ぼくは全然人気はないがマイスーパーマンをずっと追いかけている。GⅠでも本命に推したほど、プライベートな馬券はそっちから3点買い。本線はイイデザオウとの組み合わせで、馬連3960円。
 カメラがアップで3人の表情をとらえるなか、ゲートが開いて各馬きれいなスタートを切る。ぼくらは3人で声を合わせて「イイデザオウ、がんばれ!」と叫んだ。レースは4角まで予想通りイイデザオウの逃げ。そのまま頑張れるかどうかという瀬戸際で、一段と声のトーンも上がる。だが、そこまでだった。イイデザオウは直線を向くやもう一杯。その時インを突いて伸びてきたのがマイスーパーマン。ぼくは直線ではもうすっかり興奮状態で、…..(つづく)