Tag Archives: 世界の全ての記憶

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2011 週刊文春 6/30号

週刊文春 2011年6月30日号 文春図書館 活字まわり「世界の全ての記憶」 植島啓司 6  かつて室生寺の奥の聖域「龍穴」の近くをさまよっていた時、突然目の前に鹿が現われたことがあった。その鹿は不思議そうな表情を浮かべてこちらを見つめており、ぼくのほうも金縛りにあったように動くことができなかった。わずか30秒くらいだったのに、ずいぶん長い時間が経過したような気がした。鹿はそっ…   » 続きを読む

2011 週刊文春 6/2号

週刊文春 2011年6月2日号 文春図書館 活字まわり「世界の全ての記憶」 植島啓司 5  このところ震災があったり、津波がきたり、原発がメルトダウンしたりして、やたらに死が身近なものに思えるようになったけれど、なぜか自分の身が危ないという実感はない。一方で、そうした不幸を一歩下がって見ている自分がいるのだ。 ボクは前に、「家庭から死人を出すというのは、たしかに不幸なことではあ…   » 続きを読む

2011 週刊文春 4/21号

週刊文春 2011年4月21日号 文春図書館 活字まわり「世界の全ての記憶」 植島啓司 4  三、四年前に出た『バカには絶対解けないナゾナゾ』という本の中に次のようなナゾナゾがあった。 いつも仕事帰りに同僚や部下を飲みに誘っていた僧は? すぐに答えを書くのはちょっとはばかられるのだが、この際仕方がない。答えは「道鏡」。「どう?今日」というわけ。たしかにバカには絶対解けないが、解…   » 続きを読む

2011 週刊文春 3/24号

週刊文春 2011年3月24日号 文春図書館 活字まわり「世界の全ての記憶」 植島啓司 3 「私をお捜しですか?」「楽しみたいの」「誰と?」「気に入った人となら誰でも」「なんてことだ!」伯爵は思わずぞっとして叫んだ。「身を滅ぼしますぞ」   ボネ&トックヴィル『図説 不倫の歴史』より これは道徳的に退廃した18世紀フランス社交界での会話なのだけれど、当時の貴婦人たちの道徳心のな…   » 続きを読む

2011 週刊文春 2/24号

週刊文春 2011年2月24日号 文春図書館 活字まわり「世界の全ての記憶」 植島啓司 2 人はみな一生を待って過ごす。生きるために待ち、死ぬために待つ。トイレットペーパーを買うために並んで待つ。金をもらうために並んで待つ。金がなけりゃ、並ぶ列はもっと長くなる。眠るために待ち、目ざめるために待つ。結婚するために待ち、離婚するために待つ。雨が降るのを待ち雨が止むのを待つ。食べるた…   » 続きを読む

2011 週刊文春 1/27号

週刊文春 2011年1月27日号 文春図書館 活字まわり「世界の全ての記憶」 植島啓司 ここから帰る路で、そなたに云いよる男がある。その男の云うことを聞くがよい芥川龍之介「運」 これは、その日の暮らしにも困っていたある女性が、清水寺の観音さまに願かけに三十七日間お籠りをしたあげく、最後の夜に聞こえてきた言葉だという。その夜、お寺からの帰り道、背後から暴漢に襲われ八坂の塔の中へと…   » 続きを読む

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