週刊文春 2012年11月29日号
文春図書館 活字まわり
「世界の全ての記憶」 植島啓司 22
エマはやさしい言葉と、レオンの魂をとろけさせるキスを心得ていた。奥深くかくされていて、ほとんど精神的といってよいまでになっているこうしたみだらさを、エマはどこでおぼえたのだろうか?
エマ(ボヴァリー夫人)は、さえない町医者のシャルルと結婚したのだが、退屈な毎日に耐え切れず、不倫へとのめりこんで身を滅ぼすことになる。よく知られた『ボヴァリー夫人』のあらすじだ。しかし、久々に読み返してみて、実際にロドルフとの不倫の恋に身をゆだねることになるまでに…..(つづく)