1992 ELLE JAPON 11/5号

エル・ジャポン 11月5日号(No. 75)

特集=エロティシズムは知性
株式会社タイム アシェット ジャパン 
1992年11月5日発行

P20- 21
THE EROTICISM 想像力と知性がエロスの世界を広げる
エロティシズムに対する感受性は、どのようにして生まれ、磨かれていくのだろう。セクシュアルなイメージが溢れ、過激な言葉が流通しているからといって、その時代のエロティックな感性が鋭敏とは限らない。今必要なのは、分類され希薄化してしまった性をもう一度組み立て直すための、文学的な想像力だ。
植島啓司
photo: Sheila Metzner

エロティシズムは知性から生まれる
 僕が考えるエロティシズムとは、生物学上のセックスとはまったく違う何かです。その反対語だと言ってもいい。エロティシズムとは、過剰であり、逸脱であり、動物は必要としない、人間だけが持つ精神のメカニズムです。だから、当然のことながら、知性のないところにはエロティシズムは生まれない。
 性に関する情報がたくさん流通しているからその時代のエロティシズムが濃密かというと、必ずしもそうではない。現在ほど性に関する情報が溢れている時代はありませんね。ボンデージとかフェティッシュとか、誰でも平気で口にする。特に日本では、性的な風俗がファッション的にとらえられ、レッテルを貼られて分類されて、それでおしまい、という傾向がありますね。でも、性について堂々と話題にしているようでいて、誰もほんとうはちっとも性について語っていない、というのが現状ではないでしょうか。

性革命と性の表層化
 ’60年代の終わりから’70年代の前半にかけては、セックスの大きな転換期だった。いわゆる「性革命」が起こって、今まで水面下にあったものが、一挙に表面に現れてきたわけです。それまで性は深層に潜んでいて、社会の表面には出てこなかった。その代わり、フロイトの汎セクシュアリズムに象徴されるように、すべてのものが性を暗示し…..(つづく)

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