かに座のヒト

2026年3月5日

すこし前に神保町にあるブックバー「リリパット」で美術評論家の椹木野衣氏と久しぶりに飲んだ。メンバーは「リリパット」のオーナーの今本義子さんとそこで働く八木さんの2人の美女で、4人で近くの居酒屋「多幸八」で一緒にビールを飲んでから「リリパット」に向かった。椹木野衣氏(いつまでも若手の書き手と思って呼びつけにしていたのだが、すでに60歳を超えていて美術批評の世界では別格の位置を占めるようになっているので、ここでは他人行儀だが信頼の意味を込めて「氏」と呼ばせていただこう)は最近『末世の芸術』という大著を発表して大きな話題になっているので、とてもいい機会だということで楽しく飲んだ。こうして飲むのは本当に久々で、ぼくが一昨年脳梗塞で倒れてから2年が経過して初めて会ったのだった。東京芸大教授だった伊藤俊治氏を通して以前は何度も会っていたし、長年にわたるバリ島調査にも同行してもらった仲だったが、あまりに久々だったので、それ以後の活躍の様子はあまりよく知らなかったので、なんとも言えない懐かしさを感じて一緒に楽しく過ごすことになった。

八木さんの誕生日が1月だということで話が盛り上がってきて、その流れで椹木氏の誕生日が7月1日だというのでパッと思い出したことがあった。以前、伊藤俊治氏と椹木野衣氏ともう1人若手の研究者と神楽坂で4人で一緒に飲んだことがあった。そのときにも同じ話題になって、3人が3人ともに「かに座」ということで爆笑したことがあったのだった。というか、20年ほど前のことになるが、ぼくは『運は実力を超える』(角川新書)という本を出して、そこで「かに座はなぜダメ人間ばかりなのか(笑)」と書いて、「だいたいかに座といえば、よく他人の面倒を見て、周囲の人々から敬愛され、生まれつき人気のある星座だと言われるが、果たしてそうだろうか」という疑問を呈したからである。

かに座は 6/22-7/22だ。ぼくの周囲のかに座の連中を見てぼくが観察したのは「その特徴は、先ず内向的でオタクっぽいタイプが多い。顔はやや下ぶくれで、たとえ太ってなくとも、“なんとなく肉が余っている感じ”、ぶよぶよしている(あくまでも、なんとなく)。決断力にかける。それなのにいきなり何かやりたがる。周囲に迷惑をかける」と書いた。

もちろん、なんとなく人がよさそうに見えるのも特徴で、あまり敵をつくらないのもかに座らしいところ。そう書いて、芸能界から、西川きよし、内村光良、関口宏、明石家さんま、愛川欽也など50名近い名前を挙げておいた。芸能界はかに座の天国なのだ。

というわけで、一緒に飲んだ美術批評家の伊藤俊治氏と椹木野衣氏ともう1人若手の研究者がみんなかに座だということを知り、そのときも失礼極まりないその話をしてみんなを憮然とさせたのだった。いや話が横道にそれたかな(笑)。

とにかく、椹木野衣氏の新著『末世の芸術』(美術出版社)は本屋で一目見たら忘れられないみごとな装丁だ。しかも700ページ以上もある。なかなか読むのに覚悟がいる。ぼくはさっそく500ページほど読んで、岡本太郎や岡崎京子や前本彰子や山川冬樹らの名前をなつかしく見つけた。「グランギニョル未来」の演劇のこととかを久しぶりに読んだ。さらに、この本をまとめるにあたっては2011年3月11日に起きた東日本大震災が大きな動機になっていることも無視できない。それは日本の観測史上最大のマグニチュード9. 0を記録した最大規模の地震で、だれもがさまざまなことで忘れられない出来事だった。それに引き続き起こった原発事故もあって、あれを経験した世代とその後の世代では大きな違いが生まれたにちがいない。当時ぼくはJR恵比寿駅前のビルを仕事場にしていたのだが、部屋の中央のこたつに入って原稿を書いているときに突然部屋に置かれている本棚が次々と倒れたのを茫然と見つめて過ごしたのだった。

もうすぐその3月11日がやってくる。年をとると幸せなこともいっぱいあるけれど、悲しい記憶もまた折り重なって積みあがっていく。そうしたことに心を寄せながら生きることも大切なことだと思う。椹木野衣氏のさらなる活躍を祈りたい。

keiji ueshima

 

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