2012 週刊文春 2/23号

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週刊文春 2012年2月23日号

文春図書館 活字まわり
「世界の全ての記憶」 植島啓司 13

 北大路魯山人さんも「舌鼓を打ちながら、うまいうまいと絶叫し続けるところに、おのずと健康はつくられ、栄養効果は上がる。」と言うてはるやろ。 長友啓典「死なない練習」
 このところ、よく自分でごはんを炊いている。一年三六五日外食だった時代が三〇年以上続いたことから考えると、自分でも信じられないことだ。きっかけは本誌の「おいしい!私のお取り寄せ便」で岐阜の「龍の瞳」というお米が紹介されたことだった。ちょっと値段は高いらしいが、深い意味なく注文したところ、買ったからには食べなければということになったのでした。ぼくの大好物は、熱々のごはんにバターをのせて、かつおぶしをどっと振りかけ、しょうゆを垂らして、一気に食べるいわゆる「猫まんま」で、まさに「禁断の味」という言葉にふさわしい極上の食事だ。たしか本誌の平松洋子さんのコラムでもそんなふうに取り上げられていたと記憶している。
 しかし、いくら「猫まんま」とはいえ、いつも旅している身からすると、食べるからには贅沢がしたい。普段は外食でカレーライスとかハンバーガーあたりで済ませるのだが、このときとばかり高級なおかずを買い込むことになる。つい先日も、博多の特上めんたいこ、淡路島高品質のちりめん山椒、赤城南麓水系のうまから白菜、おかめ納豆、じゃがたまのみそ汁などをずらっとテーブルに並べてみた。これにかつおぶしバターごはんが加わると超高カロリーな献立になる。しかも、こうなるとついビールを飲まずにはいられない。うまい。おかずのほとんどがビールとともに消費されても、最後に本日のメーンイベントのごはんとみそ汁が待機している。まさに至福の時だ。ひとりごはんの極意は冒頭に引用したように、うまい、うまいと口に出しながら食べること。これで食後の昼寝に美女の夢でも見られたら「これぞ極楽!」と叫びたくなることだろう。


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